一発録りの時、神が宿る(音楽)

私は芸術系の大学を卒業したのですが、音響に関する授業で経験豊富なエンジニアの先生が、音楽は「一発録りの時神が宿る」、とおっしゃっていたのを覚えています。
現在は主流としてはProToolsなどのDAW(Digital Audio Workstation)というもので音楽を作るのですが、昔はギターの音をアンプを通したりボーカルをマイクで録音するのが普通でした。クラシック音楽もそうですが、楽器別に録音する方法と、全部の楽器を同時に録音する手法がありました。
先生がおっしゃっていたのは、後者の全楽器を同時に録音する時のことです。

現在では打ち込み(MIDI)を多用する方法が主流です。流行しているEDMというジャンルは打ち込みのみで作られていると言っていいでしょう。
打ち込みでは誰が作っても同じような音楽になることやタイミングが完全に機械的になるので独特のゆらぎ(f分の1ゆらぎ)が生じなくなっています。そこでDAW側はわざと打ち込みのタイミングをずらす機能を持つものも多く出てきました。
近年注目を集めているボーカロイドも人の自然な声を打ち込みように変換することで画期的な技術を生み出しました。
この技術に対しても、自然に聴こえるにはどうしたら良いか、制作者の腕が問われています。
この流れは、神が存在していた時代から科学を利用する時代への変化ともとれます。そして科学が神の時代に持っていた特徴に似せようとしている様子もうかがえます。
または、アナログからデジタルへ、という見方もできます。それでもなおアナログ時代の音を求めてレコードを聴くことを趣味にする人々もいます。

作曲をする私としても打ち込みは欠かせません。できない楽器をバーチャルで演奏することができるようになるからです。
それと同時にアコースティックギターをマイクで録音することもあります。ボーカルは必ずマイクを使います。
ですから私を含め多くの作曲家は生録音と打ち込みを両方駆使して音楽を作っている、ということになります。

近年、大きな物語としての音楽のヒット作が減少しているように思えますが、これは人の興味の変化だけではなく、楽曲制作技術の変化にも左右されているのではないでしょうか。

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